友だち

友だち (新潮クレスト・ブックス)

友だち (新潮クレスト・ブックス)

 

真冬のニューヨーク。かつての恩師であり、誰よりも心を許せる男友だちが自殺したことで、深い喪失感にとらわれている女性作家。そこに、男が飼っていた巨大な老犬が現れる…

不思議な小説だった。日記のような、とりとめのないメモの集まりような。老犬の世話をしながら、愛や友情のかたち、老いること、記憶や書くことの意味、様々な作家の言葉について思索する。あっちへこっちへ思考が飛びながら「あなた」に語りかけ、そうしているうちに時間が過ぎ去り、だんだんと悲しみが癒されていく。涙が出なくなったから、もう何日過ぎたから、癒されたことに理由や完了のチェックマークなどをつけることはできない。悲しみや喪失感を昇華していくその過程こそが癒しで、そこで綴られた言葉が自分の血肉となって、未来を生きていくための車輪を回し続けるのだろう。

わたしたちがその不在を寂しがるものーわたしたちが失い、失ったことを嘆き悲しむものー、それこそわたしたちを心の底でほんとうにわたしたちにしているものではないか。わたしたちが人生で欲しいと思いながら、結局は手に入れられなかったものは言うまでもなく。

あなたが生きいようが死んでいようが、わたしは自分のなかにあなたを抱えて生きている。あなたがわたしをほんとうに「わたし」にしてくれているから。