ヴァイオリン職人の探求と推理

創元推理文庫のポール・アダム『ヴァイオリン職人の探求と推理』を読み終えた。

ヴァイオリン職人の探求と推理 (創元推理文庫)
 

ジャンニはイタリア・クレモナの名ヴァイオリン職人。ある夜、同業者で親友のトマソが殺害されてしまう。彼は前の週に、イギリスへ “メシアの姉妹” と言われるヴァイオリンを探しにいっていた。それは一千万ドルを超える価値があるとされる、幻のストラディヴァリだった。ジャンニは友人で刑事のグァスタフェステに協力し事件を探り始めるが、新たな殺人が…

イギリス人の作家がイタリア(イギリスもちょこっと出てくる)を舞台に描いたミステリ、っていう時点で異色だけれど、謎を解くのは63歳のヴァイオリン職人というプラスアルファでかなり異色なミステリ小説。面白かった!ストラディヴァリを始めとする名職人が作ってきたヴァイオリンの歴史、またヴァイオリンディーラーの決してきれいじゃない話、ミステリ部分を彩るように奏でられる「音楽の話」の旋律が物語に豊かな広がりを与えてくれます。そうか、天沢聖司くんはこんな場所にいるのか…。行ったことのないイタリアの風景、特にヴェネチアのそれにかなり魅せられました。イタリア人視点ではボロクソに言われていたけれど、それでも行ってみたい、水の都。イタリア人の刑事グァスタフェステがイギリスのスコーンに夢中になってる姿がかわいい。