眠れる森の美女にコーヒーを

クレオ・コイル著、小川敏子訳『眠れる森の美女にコーヒーを』を読み終えた。コクと深みの名推理シリーズの第14作目だ。

昔懐かしいおとぎ話をテーマに、秋のフェスティバルがNYのセントラル・パークで開催された。ところが、ピンク・プリンセス役の女性が「眠り姫」さながら、昏睡状態で森の中から発見されて大騒動に。まもなく逮捕されたのは、マテオ!元夫の逮捕に気が気でないクレアは、必死に真犯人につながる手がかりを探し、被害者の持っていた「金の鍵のネックレス」が秘密の高級クラブの通行証だというところまで突き止めた。事件にNYの超有名レストランが関与しているのは間違いないのに、あと一歩のところで真相に近づけない。そこでクレアは、エチオピアのシャーマンから仕入れたという不思議なコーヒー豆を切り札に使う。そのコーヒーが持つ特別な力とは…!?NYのセレブな裏世界は、おとぎ話よりも不思議で危険がいっぱい?人気シリーズ第14弾!

連続コージーミステリ。今回は前作よりもさらにロングな602ページでした。長いよ!「おとぎ話」がテーマなだけあって、原題が Once Upon A Grind なのが面白い。むかしむかし魔法のコーヒ豆が、という感じかな。そんな不思議なコーヒーを飲んだクレアが幻覚を見て、それを元に謎解きをするという流れなのだけど、行き詰まる→飲む→幻覚を見る→幻覚の意味ってこれだったのね!が繰り返されて、その幻覚もおとぎ話モチーフでちょっとイメージしにくいし、何度目かでもうお腹いっぱいです…となりました。わたしはファンタジーが苦手なのかもしれない。被害者が「眠りの森の美女」からインスパイアされていて、最後は主人公のクレア自身がその美女でした、彼女は王子様のキスで目覚め…とうまい締め方でした。

今回はCIAのスパイやアメリカとソ連の冷戦という歴史などが絡み、コージーながらも重厚な味付けがされていてそこもよかった。そしていつものおいしそうな料理の数々。エスターとボリスのドタバタ乱気流のことも(ボリスが意外にロマンチックなことにはちょっとひいたけれど)、バリスタのガードナーのことも、クレアとマイクの将来のことも、めでたしめでたしでようござんした。フランコも報われますように。