多田尋子『体温』

どんよりとした天気。午後から日が差してきた。張り切ってゴミを出しに行ったらもう収集車が行ってしまった後で膝から崩れ落ち…るのをぐっとこらえて、そのまま部屋に戻ってきた。木曜日は回収が早いのね、と思ったけど、朝から電気工事の大きなクレーン車が家の前に止まって作業をしていたので、このために早めだったのかもしんまい。また月曜日がんばろう。

机でやりたい作業とパソコンでやりたい作業の切り替えがうまくいかないなーという感じだ。これは環境が原因。4日目にもなるとちょっとサボることも覚えてきていかん感じである。お昼に机を片付けるのがめんどくさくて、スツールをテーブル替わりにしてニーチェアで食べた。

夜は味の素のシュウマイ。んー具が大きくてやっぱりおいしい。食べてたらEちゃんからLINEが来たので、東京に来てるんだよというようなことを話す。話せてよかった。今朝の悲しい出来事も「あるある!」と笑い飛ばしてくれて救われた気持ち。

多田尋子『体温』を読み終えた。とてもよかった。主人公たちと境遇は違くても、年齢と立場(独身)が近いので「わかる」という気持ちに何度もなった。世界の片隅の片隅に生きる女の人たちにスポットを当てて、スポットは当てるけどライトは当てないみたいな、劇的な何かが起こるわけではなく、ハッピーエンドでもバッドエンドでもなく、片隅は片隅のまま、どの物語も静かにありのままにフェードアウトしていくのがよかった。それでもこの先もしかしたら、みたいな夢がある気がして、わたしは『秘密』がいちばんすきだ。

p.61『体温』

気持ちを言葉に置きかえるのはとてもむずかしい、と率子は受話器を持ったまま考えていた。うれしいと思っていても、「うれしいです」というとずれてしまう。率子はそのときうれしかったのだが、それをどういったらいいのかわからなかった。

p.131『秘密』

考えてみれば、彼が、若くて美しいミチ子をおいて、素子をえらぶはずがない。性格がどうとかいったって、わるいところばかりの人もいないかわりいいところばかりの人もいない。性格がいいとかわるいとかいうのはほんとうにあてにならない。気があうかあわないかだけのことだ。

p.220『単身者たち』

計子が原口のそばにいたいと思うのはそのせいかもしれなかった。計子が侵出しないかぎり二人のあいだは変らない。原口は侵出してこないからだ。夫婦とか愛人とか親子とかそんな濃い間柄でなくても、ただの雇い主と雇われものとのあいだででも、人と人との間隔は大事なことだと計子には思われる。もちろん夫婦とか愛人とか親子とかのあいだの間隔はもっと大事なことだと思う。しかし愛だとか一心同体だとか身内だとかいわれると、間隔を持っているのは裏切りのような気にさせられる。