大統領令嬢のコーヒーブレイク

クレオ・コイル著、小川敏子訳『大統領令嬢のコーヒーブレイク』を読み終えた。コクと深みの名推理シリーズ15作目である。

長い歴史を誇るニューヨークの老舗コーヒーハウス「ビレッジブレンド」が、いよいよワシントンに2号店をオープン! 人気店になること間違いなし、のはずが、トラブル続きで経営はぎりぎり。マネージャーを務めるクレアは頭を抱えていた。そんなとき、コーヒーハウスに併設したジャズクラブへ、黒づくめの衣装で舞台にあがる女性ピアニストの姿が。その正体は大統領令嬢のアビー! 才能あふれる演奏にクレアはすっかり魅了されてしまう。ところが、身分を隠した令嬢の存在はたちまちマスコミの知るところとなり、店は混乱の渦に。そのうえ、アビーが忽然と姿を消したことで、FBIはクレアを最重要容疑者として指名手配した。まさか自分が逃亡劇を繰り広げることになるとは夢にも思っていなかったクレアと、2号店の運命は!?

舞台がいつものニューヨークからワシントンに移り、そしてタイトル通り大統領令嬢が出てくるってことは当然大統領もファーストレディも出てくるわけで、スケールの大きな話でした。クレア・コージー、ついにホワイトハウスへ行く。大統領やファーストレディの前でも萎縮せず、いつものように生き生きと振る舞っているクレアがとても素敵です。コーヒーと歴代アメリカ大統領に関するコラムも面白かった。

時系列が過去に遡りながらあっちこっちに飛ぶので、こんがらがっちゃうところがありました。男性の部下が女性の上司からセクハラに合う、というのはわりと新しいのではないかしらん(日本にいるからかも)。仕事にもクレアにも誠実なマイクが報われそうでよかった。またニューヨークで刑事っぽい仕事をしてほしい。

ルーサー・ベルシェフが作る料理がどれもおいしそうで、想像でよだれを出しながら読みました。バターミルク・フライドチキンウィングってなんなのさー。これからジョイと組んでどんなおいしいものが生まれてくるのか楽しみ。

見た目と行動のギャップがありすぎて面白キャラになりつつあるマダム。クレアを励ますためのこの言葉に、わたしも励まされたんでした。

「気をしっかり持って、クレア。毅然として、前だけを見て進むのよ。すべてがうまくいくのだと信じなさい。そうすれば、きっとなにもかもうまくいくわ!」