うちの社長の行為が気に入らなかったから批判するよ

先週の水曜日に社長がnoteに書いた記事を社員に見せた。社長自身が考える、社会人として知っておくべきことを四項目にまとめた記事である。前日にセールスのチームで激しい口論、また他のチーム同士でうまく連携がとれなかった事例があり、それらのことが重なったため記事を書き、社員に公開したのだと思われる。

先週一週間はこのことで心がもやもやし、大変に疲れた一週間であった。

わたしの考えるこの記事、およびこれを部下である社員に「仕事についての考え方をまとめました」という一文とともに公開し、読ませ、他の社員が閲覧できる形で記事の感想と仕事をする上で心がけていることを書かせ、それに社長本人がコメントする、そのやり方に問題があると思う点は以下の通りである。

  1. 社長はこの記事を「仕事についての考え方」としているが、社長が書いている以上会社理念に通じるものであると部下は考えるだろう。協調性の有無を大変に強調しているが、パーソナルに関わる部分を理念にするべきではないとわたしは考える。協調性がない人間はこの会社に必要ないということだろうか。
  2. 協調性というパーソナルに関わる部分についての強要、および挨拶の強要など社員一人一人の個性をぶっ潰すような表現が見られる。時代にそぐわない、まるで軍隊のような記述がそこここに見られる。
  3. 協調性のない者、として挙げられている人物像がある社員を想像させ読んでいて不快だった。その社員が問題だと考えているなら個人対個人で話すべきだろう。この雑な試みで彼/彼女に自分の思いが届いたと確信できるのだろうか。
  4. 3の人物像の例の規模が小さすぎて大谷に謝ってほしいくらいである。休日に、独身一人暮らしの社員が、小さい子どもを含む家族が参加するBBQに気軽に参加すると思っているのだろうか。大谷だって参加したくない時は参加しないだろう。社長自身がまるで人の気持ちを慮っていないし、協調性がない。「平気で断ることができる環境である」というのがいい会社であるとわたしは考える。
  5. 会社が頻繁についている嘘のことは棚に上げ、きれいごとばかりを書いている。わがままな子どもが書いたような文章である。また、記事は日本語で書かれているが社内には日本語を解さない社員もいる。自動翻訳ですべての意図が伝わると思っているのだろうか。
  6. 社会人一年生が集まる、始まったばかりの会社においてはこの記事を公開する意味があると思うが、すでにある程度の関係性ができあがっている社員たちに公開するのは無意味、というかそれ以下の結果を生む可能性がある。すでにこの記事の公開後、わたしは社内の雰囲気が悪い方向に変わったと感じている。
  7. 社長が書いている以上、そして感想を他の社員が閲覧できるという環境である以上、社員はこの記事に否定的な意見を出すことが困難である。社長はおそらく「共感してほしい」もしくは「自分の下で働く以上共感しなければならない」と思いながらこの記事を書いたのであり、社員の感想にも「〜の部分に共感した」という言葉が多く見られた。その感想を否定するつもりはないが、その後に何の発展も見られない非常に浅いやりとりである。社長は記事を公開する際「質問があれば答えます」と書いたが「批判も受け止めます」とは書かなかった。質問さえしている社員はおらず、オーディエンスから共感ばかりが得られ社長は大層いい気持ちになったであろう。わたしは大変に不快であるが。
  8. オーディエンスからの感想に対し、社長は一文、二文の短いコメントを返した。そのコメントも残業を褒めるものがあったり、イベントへの参加を促すものがあったりして読んでいる身としては不安になった。また、一人の社員にだけは感想へのコメントを返しておらず不快だった。社長としてそのやり方はないだろう。

では、社長はどうすればよかったのか。

  1. 社長自身が書いた記事を読ませるのではなく、第三者が書いた文章を読ませて感想を書かせる。その場合の感想は他の社員が読める形で公開してもよい。
  2. 自分の書いた記事を読ませたいなら「批判してほしい」くらいの気持ちで公開するべき。感想が知りたいのなら個人対個人で面談、ないしDMという方法で聞き出す。
  3. 単に記事をオンラインで公開するだけで済まさず、社員全員に口頭で説明するべき。日本語を解さない社員の助けになると思う。討論の形になっても構わない。
  4. 単に「仕事をする上で心がけていること」を知りたいのなら、社員個人個人へアンケートを取ればよかった。人数が少ないので可能であろう。それらをまとめ、そこへプラスアルファで社長自身の意見を盛り込めた記事を公開すればよかったのではないか。

なお、わたしはこの記事をPDF化し、赤を入れた。機嫌悪いときにこの作業をしたので、大変に口の悪い赤になった。明日からも勤務は続くが、とりあえずこの件に関してお焚き上げは完了ということにしたい。