弥次子と喜多美「ふるさと納税」

日曜の昼下がり、弥次子と喜多美はほどよくざわめく喫茶店で向かい合って座っている。

二人の頼んだアイスコーヒーは半分ほどに減り、グラスは結露している。

弥次子「ねえ、喜多ちゃん。あんたふるさと納税ってやってる?」

喜多美「あーなんかもらえるやつでしょ。あたしはやってない。面倒くさくて」

弥次子「そうなんだ。まぁそれも正解かもね」

喜多美「弥次さん去年からやってるよね。どうして、お得なんじゃないの?」

弥次子「うーん、お得、、、なのかなぁ。今年は何もらおうかなぁと思ってサイトを見てたんだけど、返礼品の種類が膨大すぎて。一体自分は何をやってるんだろうって途方に暮れちゃったよ」

喜多美「そうなの?」

弥次子「やらなくてもいいわけじゃん、ふるさと納税って。やってもやらなくても払う税金の額は変わらない。むしろやったら手数料で二千円取られるからむしろ損する」

喜多美「でも実質二千円以上の返礼品がもらえるから得ってことなんだよね」

弥次子「そういうことなんだけどさ、、、なんかこう何が何でもモノをもらうぞ、人より良いモノをもらうぞっていう乞食根性がさ、自分にも湧き上がっているのが悲しい」

喜多美「乞食根性(笑)」

弥次子「今ってさすごいじゃん、人より得しようっていう情報がさ。ふるさと納税もそうだけどポイ活とかさ。ただ買い物してポイントを貯めるんじゃなくて、このサイトとこのサイトを経由してもらえるポイントを倍にするとかさ、ほんとにそういう情報が多い」

喜多美「ポイ活かーあたしそういうの興味ないからなぁ」

弥次子「喜多ちゃんのそういうとこがうらやましいわ」

喜多美「ひどい面倒くさがりってだけだけどね」

弥次子「世の中の人がなんでそんなみみっちいことになってるんだと思うわけ。ポイントってお金じゃないんだよ。まぁポイントでモノを買うことはできるんだけど。給料が上がるわけじゃないし、銀行に預けてるお金が利息で増えるわけじゃない。お金は簡単に増えないから簡単に増えるポイントを増やそうとする。税金を払ってモノを貰おうとする。みんなそういうお得な情報に飛びつく」

喜多美「弥次さんも含めてね(笑)」

弥次子「そうなんだよ〜わたしめっちゃ飛びついてるからね(笑)ひとつたりとも見逃すものかって思ってる。もうさ、悲しいよ」

喜多美「ふーん、お得な制度をうまく活用してて偉いと思うけどね」

弥次子「ありがと。あとさ最近は何何パの乱立がすごいじゃん」

喜多美「パ?」

弥次子「タイパとかコスパとか。最近じゃスペパっていうのも聞いた。スペースパフォーマンスだって」

喜多美「すごいね。いかに小さい能力で大きな効果を得られるかってことだよね」

弥次子「そうそう。これも乞食根性じゃん。自分は少ないお金しか出せません、でも大きなリターンをくださいねって。すごいみみっちい!大きくいこうよ!」

喜多美「でもいけない(笑)」

弥次子「そうなんだよ〜もう一億総貧乏、一億総乞食!みんなそれを認めなくないから、ふるさと納税もしない、ポイ活もしない人を見つけて笑ってる。あいつより俺は得してるぞって」

喜多美「そうか、わたしは笑われているのか」

弥次子「喜多ちゃんはうちらがみみっちいことに賭けてる時間とお金を、自分でいいように有意義に使ってる。うちら以上にうちらのことを笑っていいよ、水戸黄門っぽくさ」

喜多美「かーっかっかっかっか!この乞食根性の虫ケラどもめ!助さん角さんやっておしまい!!」